EMと共に生きる人々(WE USE EM)

EM健康アドバイス
「認知症になりやすい生活をしていませんか?」

認知症は静かに進む

なぜ多くの方は認知症になることに不安を感じるのでしょうか?

それは人間らしい知性や道徳心などが失われ、人間たらしめる尊厳に関わる問題だからです。
呆けた者勝ちだという視点を持っても構わないとは思いますが、できれば認知症にはなりたくないですね。なったとしても、元に戻りたいものです。

認知症だと自覚できるうちは大丈夫などと言われますが、あながち間違いではありません。
認知症のテストで明らかな中等度認知症の方が「私は認知症じゃなくてよかったわ」と言っているのを聞きます。
本人もわからぬうちに静かに、静かに、認知症は進んでいくものなのです。
 

予防と治療は同じこと

予防と治療は、分ける必要もなく「予防=治療」であることはおわかりですね?
ご存知ない方は講演会に参加していただくとか、私の書籍を参考にしていただければ幸いです。
私の考える認知症の原因は大きく分けて、①環境、②気力、③代謝力の3つがあります(脳卒中や頭部外傷などの細かい原因は除きます)。

一夜で認知症になる

高齢者を入院させるだけで、認知症になる可能性をご存知でしょうか? 早いと一夜で起こります。経験的には男性に多いです。私は脳外科医なので、脳外科に来られた高齢者の方の例を言いますと、頭部外傷で無症状の場合であっても、脳内に若干の出血があれば入院が原則となります。意識もしっかりしていて五体満足なのに、入院を強要されるギャップが引き金になるのでしょうか、不本意な入院で起こりがちな現象です。
具体的にどうなるかというと、点滴を引っこ抜いて腕から血を流しながら、はだけた病院衣のまま裸足で家に帰ろうとします。職員が止めますと、大声で叫びながらも帰ろうとします。家に帰せる状態ではないが、本人は帰ろうと暴れて廊下でもみ合いになります。こんな時、病院としてはどうするのでしょう? 方法は2つしかありません。①薬で眠らせる、②手足と身体を抑制する。抑制というか、拘束です(現在は原則禁止ですが、必要な時はあります)。暴れる→投薬→暴れる→投薬という悪循環です。この対応で、その人の精神は正常化するのでしょうか?
これを認知症と呼ぶのか、一次的な錯乱状態(せん妄状態)と呼ぶのか、実は難しいのです。入院後に錯乱した時点で帰宅した場合、ほとんどの方は正気を取り戻します。この場合はせん妄です。しかし、家族から帰宅を拒まれた場合は入院継続となり、薬で管理されて正気に戻ることは極めて難しくなります。せん妄状態が継続すると認知症になるとも言えるでしょう。人間の脆さの一面です。なぜそうなるのかはわかりません。もしかすると、認知症の入り口にいる方なのかもしれません。
 

高層マンションの 一人暮らしに注意

また、現代特有の環境因子が認知症を増やしているとも思われます。
無趣味で高層階に住む独居高齢者です。基本的にはどの階に住んでいても、違いはエレベーターに乗る時間だけです。歩行距離は何階に住もうと変わりありません。問題は心理的な距離感です。上から見下ろす地上への距離感が出不精を招きやすいのです。階段のみの3階以上の集合住宅でも同様の現象は起こりえます。

私は一軒家とマンションの経験がありますが、一軒家の方が圧倒的に家と外の出入りが増えます。小さな庭でも、何かと手入れをします。忘れ物もすぐに取りに帰れます。
しかし、マンションの場合は傘を忘れて取りに帰ることを思うだけで気が滅入るのです。目の前に玄関があるかどうかで、人の意識はかなり違うのです。

出不精になれば、人に会わない、人と喋らない、テレビを見ては居眠りをする。
食事や買い物は宅配となり、ますます動かなくなります。そして筋力が落ちて、太っていきます。
動かない→筋力低下→太る→動かない→筋力低下→太るという悪循環に入りますと、認知症は急接近してきます。
筋力低下から転倒して骨折となれば、寝たきり必至で健康寿命は幕を閉じるのです。
趣味のない高層マンションの独居高齢者で、上記に当てはまる方はいませんか? 頑張って出かけてくださいね。
 
医学博士  田中佳
昭和60年に東海大学医学部卒業後、同大学付属病院脳神経外科助手を経て、市中病院で急性期医療に長年携わる。脳神経外科学会および抗加齢医学界の専門医となり、悪性脳腫瘍に関する研究で医学博士を取得。現在は、予防医学、教育講演活動、執筆活動に取り組んでいる。主な著書「健康自立力」「続・健康自立力」(メタモル出版)、「健康の原点は食と腸にある」(きれい・ねっと)、「あなたが信じてきた医療は本当ですか?」(評論社)