• #EMと共に生きる人々

韓国で拡がるEM菌

エバーミラクル社が製造・販売するEM(有用微生物群 ※通称 EM菌)は、直接または全国の販売代理店を通して韓国国内の農業技術センターや畜産協同組合、農家、行政、家庭(市民)に届けられ、広く活用されています。今回は、エバーミラクル社と共にEM活用現場の成果を支える研究者と、異なる五つの現場をご紹介します。


※EM(通称:EM菌*)はEffective(有用な)Microorganisms(微生物たち)の英文の頭文字に由来しています。その名の通り、特殊なひとつの菌ではなく、乳酸菌や酵母、光合成細菌など、どこにでもいる微生物で、人間にとっていい働きをしてくれる微生物の集まりです。

EM活用現場の成果を支える研究者

―環境工学が専門で、北海道大学で博士号を取得し、日本語がお上手なキム教授に、EMの応用研究についてお話を伺いました。

 EMを使って、最初に成功したのは悪臭除去と水質浄化です。汚染物質をどのように処理するか、それは単純に除去することではなく、生態系の中で循環させることです。つまり、自然界で汚染物質の除去というのは、循環によって自然をより深く豊かにしていくことに繋がります。それがEMを使う目的ですね。
私が考える富栄養化による藻類発生の抑制対策は、植物プランクトンより動物プランクトンを盛んにする目的でEMを使うことです。工学的な汚染処理は、処理後に別の汚染物を出すことになり、本質的に汚染を消せません。私の夢は自然と工学を組み合わせて、循環によって完璧な汚染除去をすることです。

私が見ているのは循環です。循環が上手くいく間隔(インターバル)でEMを適量入れることが大切です。最初、量と間隔がまだわからない頃、EMを使うと藻類が減ると書いてあるのに、実際やってみると藻類がもっと繁殖してしまって困ったことがありました。やはり、量と間隔のバランスが大事なんです。それがノウハウですかね。

農業への活用のために、植物の塩分ストレスについても研究しました。EMをしっかり使うと、塩分の問題はなくなります。この研究は10年以上前にやった仕事です。

今、私が取り組んでいるのは農業や畜産の現場で活用できるEMの液肥や飼料です。アミノ酸のような栄養分を入れるとpHが上がってEMが不安定になるのですが、EMの品質の安定性を維持したままで、栄養分を増やすことに挑戦しています。今後の目標は、環境分野での水や大気の汚染、廃棄物などの除去にEMの活躍の場を増やしていくことです。そのために、様々な分析をして、データベースを作っています。
 
  • 全州大学 農生命EM環境研究センター/EM研究開発団
    研究教授・工学博士
    キム・ヨンギュ(金 英圭)氏
  • 今までに行った環境浄化の現場と成果を詳しく説明していただきました

87万人の大都市で 住民にEMを無料配布

富川市(プチョン)は、仁川(インチョン)空港のある仁川広域市とソウル特別市に挟まれ、人口密度がソウル特別市に次ぐ全国2番目の都市です。面積53㎢、人口87万人。日本で言うと、東京都世田谷区(面積約58㎢、人口約90万人)に匹敵します。87万人が暮らすこの街で、EMが市民に無料配布されています。

富川市は、36の「洞(ドン)」という行政区域に分かれています。2016年7月に行政体制を再編し、三つの区役所を廃止。36洞の人口と規模を考慮して、新たに10ヶ所の行政福祉センターを発足しました。この行政福祉センターを拠点として、住民にEMが配布されています。EMの配布が始まったのは7、8年前。行政再編などがあってEMの配布も立ち消えになるかと思われた時、市民の中から続けて欲しいという声が上がり、新体制になっても継続しているのだそう。富川市がEMを年間で約500~600トン培養し、各行政福祉センターにタンクローリー車で供給しています。市民が1ヶ月あたり40~50トンのEMを使っている計算になります。

冬の気温が氷点下になる韓国。700リットルくらいの屋外に設置されているEM配布用タンクには、きちんと保温機能が付いていて、通年で一定の品質のEMが配布できます。

また、大量にEMを使いたい市民は、富川市のセントラルパークにあるEM培養室に直接取りに行くこともできます。EMの家庭での使い方や効果を紹介する資料(写真左上)も市民に配布され、市民がEMを続けやすい環境づくりがされています。


 
  • EMの家庭での使い方が書かれています。
  • 行政福祉センターの外に設置されているEM配布用の保管タンク。

東豆川市では マンションに EM菌の培養タンクを設置

ソウル特別市の北にある東豆川市(トンドゥチョン)では世帯数の多い高層マンションの敷地にEM培養タンクを設置し、マンション住民に無料配布しています。また、市によるEMの使い方講習会も開催されています。EMを家庭で利用することは、下水道の汚水の浄化能力アップと悪臭防止に大いに貢献しています。

EM発酵飼料で育つ 韓国牛肉ブランド

任実(イムシル)郡 畜産協同組合 繊維質飼料工場

任実郡は特産品としてチーズが有名で、酪農や畜産が盛んな地域。人口約3万人の町で、1万7千頭の牛が飼われています。1軒の農家の規模が比較的大きいのが特徴で、平均で50頭、大規模農場では500頭を飼育しています。

また、任実地域の国産の牛肉ブランド「チャムイェウ」は、2014年から4年連続で大統領賞を受賞しています。
そんな地域ブランドと畜産農家1500軒を支える任実畜産協同組合では、2009年にEMを微生物資材として取り入れた繊維質飼料工場を建設しました。韓国では色々な微生物資材が発酵飼料として登録されており、任実ではEMを導入し、牛の成長段階に合わせた約20種類の飼料を製造販売しています。その生産量は1日100トン。
その他、農家自身が鶏・豚・牛の飼料に混合するためのEMボカシも年間400トン販売しています。
肉質や味が良くなり、畜舎では悪臭低減に効果があります。短期間で出荷する養鶏では、すぐに効果が発揮される資材が好まれるため、EM発酵飼料が良く使われているのだそう。

全羅北道の自治体から約50%の補助金が出ることもあり、EMの活用が拡がっています。
  • 工場長のキム・ギョンテさん
  • 韓国の国産牛肉ブランド「   (チャムイェウ)」の飼料
  • 牛飼料用の原料のサイレージ。干し草にトウモロコシとEMを混ぜて発酵させています。
  • 養鶏用のEM発酵飼料。とても美味しそうな発酵の香りがします。
  • 養鶏用のEM発酵飼料のパッケージ。
  • 工場内のEM培養施設。畜産発酵飼料の製造のため、1ヶ月150トンのEMを培養しています。
  • EM導入をきっかけに建設された大規模な工場です。

根が立派に!高級特産品 高麗人参の価値が向上

錦山(クムサン)郡 農業技術センター

韓国では一番有名な高麗人参の産地として知られる錦山。栽培に適した気候と土質であることから、約1500年前、百済の時代からこの地で高麗人参が作られています。毎年9月~10月頃には錦山高麗人参祭りが開かれ、外国人も含めた多くの観光客が訪れます。神秘の霊薬と言われる高麗人参の栽培はかなり特殊で、栽培前にまず畑の土作りに2~3年間を要し、種を撒いてから収穫までになんと5年もかかります。

錦山の多くの高麗人参農家が、土作りからEM活性液を使用しています。EMを使うことで、人参の根の大きさや根張りが良くなって商品価値が高まるのみならず、作物の病気が減って収穫量も増えるということで、農家にとっては良いことずくめです。

錦山郡の農業技術センターは、国内で最も早く約10年前にEMの培養施設を作り、地域の農家に安価で提供を始めました。錦山郡には約1万軒の農家がいて、EM開発者の比嘉教授を招いて農業技術センターが開催したEM農業利用の講演会には約1000人が参加しました。EMを栽培に活用するかどうかは農家が選択しますが、病害が出にくいというEMの評判を聞いて使い始める農家が少しずつ増えてきました。現在では、培養用と貯蔵用タンクを合わせて全部で9基(19トン分)を備えていて、年間で650トン~800トンのEM活性液を供給しています。また、農業技術センターで購入せず自分でEMを培養している農家もいます。

国民の健康を支えるのは、その国の健全な土壌とも言えます。韓国では、EM以外にも多くの微生物資材があり、以前から使われてきました。今後さらに健康志向の流れができれば、微生物資材の使用規模を拡大するだけで、国の土壌全体の蘇生が可能になる素地が整っています。
 
  • 0年以上EMの代理店をしている園芸学の博士号を持つキム・ウィドンさんは、土壌が肥料過多で栄養塩類が作物の生長に悪影響を与えるのを解決するためにEMを使い始めました。キムさんは、錦山だけでなく広い地域の農家にEM栽培の技術指導をされています。
  • 有用微生物・液肥培養センター

悪臭対策で ウナギの味と食感も向上

高敞(コチャン)郡  ウナギ養殖会社 テヒョンヤンマン

高敞郡は韓国の西海岸の町。遠浅の海が広がり、アサリやワカメなどの養殖が盛んです。中でも有名なのは長魚(チャンオ)。韓国では、ウナギ、アナゴ、ハモをまとめて長魚と呼びます。

ウナギの養殖会社の社長ユン・ ヨンシクさんは、10年間ウナギの養殖にEMを活用しています。以前は、ウナギの水槽は糞尿のアンモニア臭が作業服に染み付くほどひどかったのだそう。そこで友人に勧められたEMを悪臭対策のために、糞尿をろ過して集める水槽に入れ始めました。その効果は抜群で、養殖場はほとんど悪臭がしなくなりました。

また稚魚が病気にならないので経営の安定にも繋がっています。季節によって出荷量は変動しますが、年間25万匹を養殖し、50~60トンの収穫量になります。最盛期には、水槽面積は3300平米で、1ヶ月にEMを2トン消費します。ウナギの出荷先は、主にソウルやその近郊のキョンギド京畿道のレストランや専門店。食感が良く、美味しいと評価されていて、EMを使う前と比較して、今の方がお店の評判が良いと感じています。

ユンさんは以前、高敞郡の議員を務めていた時に、この地域の農業・畜産・水産でのEMの利用拡大に貢献しました。そのおかげで、農家は農業技術センターで作る安定した品質のEMを手軽に買うことができます。

EMは安全で経済的で効果がある資材ということで、高敞郡の特産品であるスイカ、ポップンジャ(トックリイチゴ)、ブルーベリーの他、長魚やエビ養殖などの水産、畜産の農家にもEM活用が口コミで拡がりました。
この地域で今後もさらにEMの活用が拡がっていくと予想されます。
 
  • ユン・ヨンシク社長
  • 養殖池の中のウナギ。通常はウナギにストレスを与えないよう養殖場内は暗くしている。
  • 焼き肉のように、炭火で焼いたウナギに、特製ソースをつけてサンチュで巻いて食べるのが韓国流。
現在は73頭を飼育。昨年、移転して建て替えた牛舎は、臭いもなく清々しい環境です。

牛舎の環境改善で 牛乳の品質向上に成功

高敞(コチャン)郡  スンス牧場

20年以上乳牛を飼育しているファン・スンスさんは、2012年からEMを活用しています。EMを使う前までは、牛舎の環境は悪臭がひどい状態でした。牛たちは自分たちの糞尿から発生するアンモニアガスによってストレスを受け、牛乳の品質も低かったと言います。牛乳の品質検査をする政府機関の職員から、EMを使うと一等級の牛乳になると勧められてEMを使い始めました。使ってみると、実際に牛乳の品質が高まりました。

EMの効果については、使い続けていくうちに、いつの間にか悪臭が消え、牛が病気にもあまりかからなくなったことに気がつきました。酪農家にとって牛の「乳房炎」が一番の心配事。乳房炎の牛乳が一滴でも混ざると、タンク全部の牛乳を廃棄しなければならないため、牛が病気にかからないことが何より大切です。

牧場経営にとって、品質を高めて維持することが収益の増加と安定に繋がります。そのため、牛の健全な生活環境をいかに整えるかが鍵となります。飼料2トンあたりEMを40リットル混ぜて牛に食べさせ、飼料の消化率も高まりました。

場内にもEMを散布して悪臭のない環境を実現しています。また、EMで発酵した牛糞堆肥を無償で近隣の農家に提供しています。
このようにEMはスンス牧場にとって欠かせないものとなっています。

 
  • 牛だけでなく、ファンさん自身もEMを使って健康管理をしています。
  • サをやる直前に飼料にEMを混ぜています。
  • スンス牧場では、EM活性液を自家培養して使っています。