• #EMと共に生きる人々

有明海の水環境改善のために~EM仲間・行政とも連携~

多くのEMの仲間と共に、柳川市とも連携し、有明海の浄化活動を続けてきた堤さん。地元の環境を守り続けていくため、行政への働きかけ、他の水質浄化活動団体とも繋がり、活動を続けています。

有明海と地域を愛する仲間たちの絆を力に

有明海に面する福岡県柳川市で海苔の養殖を営む堤さんご夫妻(写真右・『甦る有明海ネットワーク・ちくご』 代表 堤キミ子さん・左 堤元一さん)は、有明海で海苔の大凶作となった平成12年に、EMに出会って以来、積極的なEMでの浄化活動を続けてきました。
同年、有明海全域で大凶作になったにも関わらず、熊本県熊本市河内町では海苔の収穫量や質が落ちず、大きなニュースになりました。河内町では平成7年から自治会である河内校区『せせらぎ会』が、EMを活用した環境活動を続けていました。堤さんたちは河内町でのEMの活用と成果を視察し、EMを活用した有明海の浄化活動を行おうと決意しました。
そして地元の理解を得るために署名活動を行い、柳川市の漁業協同組合へEMを使った浄化活動の説明や指導に奔走し、地域で力を合わせてEM活性液の製造・EM団子づくりをを始めました。初年度は力を合わせて、20万個ものEM団子を投入。なんとその翌年には海苔は大豊作となりました。
それ以来、堤さんは多くの志を同じくする仲間の人々と、EMでの有明海の浄化活動を続けています。

 

  • 柳川市生活環境課の皆さん
  • 写真(左)団子の土を機械で混ぜている。土運びは男性陣が担当
    写真(右)歓談しながらあっというまにきれいな団子が出来ていく

EM活動の仲間と行政との連携で行う浄化活動

4月28日、毎年堤さんが行っているEM活動のひとつ、堤さんの地元、柳川市の大和庁舎でのEM団子作りが行われました。
甦る有明海ネットワーク・ちくごの活動の仲間が50人以上集まって、この日1日だけで1万個のEM団子を作ります。また、団子作りに必要な土は、柳川市が購入し、環境課の職員の方も参加します。

柳川市では、堤さんたちがEMでの浄化活動開始当初から、活動への理解と協力を得られるよう、行政に働きかけ、市と堤さんたちボランティア団体が協力してEMの活用を続けています。EM団子作りのこの日も、柳川市役所環境課から課長さんをはじめ、3名の方が参加されていました。また、柳川市では市内3ヶ所の庁舎(柳川市庁舎・三橋庁舎・大和庁舎)でEM活性液を無料で配布しています。大和庁舎ではEMボカシも作って配布されていて、家庭や自家菜園で、浄化活動などの活用がしやすい環境になっており、EMが日常的に、身近にある地域なのだと感じられました。
  • 写真(左)ずらりと並んだEM団子。
    写真(右)決まりは1ケースに50個作ることだけなのに、見事に大きさの揃った団子が1万個出来上がりました。想いはひとつ、息もぴったり!


EM団子作りの参加者は『甦る有明海ネットワーク・ちくご』の皆さん。共に活動を続けてきた堤さんの仲間の方々です。
海苔の養殖など漁業に携わる方をはじめ、様々な業種の方、主婦の方などさまざまですが、地元の水環境を良くしたい、保ちたいという思いはひとつ。
同じ思いの仲間と集い、語らい合える場があることは本当に楽しい、と何人もの方が口にされていました。多くの仲間が集う場は、地元を愛し、活動を続ける皆さんの大切な活力の元になっています。
  • 役割を分担して手際よく団子作り終了。一仕事終えた皆さんの笑顔

EM団子で稚貝が育つ環境へ回復

有明海は、古来から海苔の養殖と共に、豊富な貝を獲ることができました。水質の悪化やヘドロの影響で、アサリなどの貝類が激減し、平成26年には過去最低の漁獲量にまで下がっていましたが、回復の兆しを見せています。稚貝が生育できるよう保護を行い、小さな貝は獲れるようになっていました。しかし、大きく育った貝はほとんど収穫できなかったそうです。長年、貝の養殖に携わり、EMの活用も20年以上になるという川口さんは、貝が激減していた3年前、稚貝の生育に適したポイントを見定め、3ヶ所の海中に、『甦る有明海ネットワーク・ちくご』の仲間と協力してEM団子を投入していました。そのポイントではアサリが大発生し、更に、3年目の今年には、大きく育ったアサリも収獲できました。長年の経験とEMの活用が組み合わさって生まれた成果。海は狭く区切った範囲と違い、結果が出るまで時間もかかり、数値でEMの効果を計ることもできませんが、ご自身の実感としてEM団子投入の効果だと思うと、その喜びをお話してくださいました。
EM団子作り終了後の昼食ではまさにその有明海のアサリの味噌汁が振る舞われました。有明海のアサリは今が旬。出汁もアサリだけから採った味噌汁。有明海本来の豊かさを感じさせてくれました。
  • 写真(左)大牟田エヴァクラブの川口さん
    写真(右)有明海の旬のアサリが一杯の味噌汁。口に含むとアサリの旨みと香りが口いっぱいに広がる

方法や考え方は違っても想いは同じ―繋がっていく浄化活動

また、今年は、EMで活動されている皆さんに加えて、柳川の水環境保全の団体「堀なおしnetwork蒲池堀割委員会」から数名の方々が新たに参加されていました。
柳川の地域は、元々、干潟に「掘割」と呼ばれる水路を掘って排水を促し、掘った土を盛って、農作物を育てたり人が住むようになった土地。掘割は人々の生活と切り離せない、重要な水路でした。今も掘割をどんこ船で下る川下りは柳川市の名物になっていますが、この掘割も水質汚染が進み、埋め立てが検討されるほど悪化した時期もあり、「堀なおしnetwork蒲池堀割委員会」は、その掘割の水環境や景観を守ろうと活動を続けています。
豊かな恵みをもたらしてきた有明海を守ろうと立ち上がった人々と、古来から生活と共にあった地上の水環境を守ろうという想いで活動を続けてきた人々。柳川市の水環境改善に大きな関心を寄せ、EMでの浄化活動にも理解の深い柳川市市議会議員の河村好浩さんが間を繋ぎ、お互いの活動に参加しようという動きが現実化しはじめました。
この6月4日に市内の掘割で行われる浄化活動には、EMで活動する堤さんと仲間の方々も参加して、EMを投入する予定です。
  • 写真(左)当日のEM団子作りにも参加されていた柳川市市議会議員の河村さん(左側)
    写真(右)作業の準備に走り回る堤さんも合間をぬって団子作り

EMの仲間たち―有明海・地元への想いで繋がる絆

EM団子作りの前準備から、当日も参加者の方たちが滞りなく、楽しく作業ができるようにと、忙しく動いていた堤さん。生業の海苔の養殖にも、美味しい海苔を届けたいと愛情とこだわりで向き合っている堤さんご夫妻は、浄化活動を始めた頃から、海苔を育んでくれる海を守るため、忙しい生業の合間を縫って浄化活動に、地元へのEM活用の浸透に奔走してきました。浄化活動を開始した当初には、各家庭で活用してもらい、EMが良いものだと知ってもらう為に、一年間無料でEM活性液を配布しました。EMを多くの家庭で活用することで、排水の流れ込む川や海の水環境の改善にも役立ちます。その後、堤さんたちの働きかけが実って柳川市から無料でEM活性液が配布されるようになり、今では随分EMの活用が浸透している地域になっています。
堤さんはEMでの浄化活動を始めて以来、『甦る有明海ネットワーク・ちくご』の代表として地域のEM活動の牽引役となり、また地域への浸透にも尽力し続けてきました。そのお話の中で仰っていた言葉は、団子作りの会場で皆さんが口々に言われていたのと、同じ想いでした。
「皆さん、芯から有明海や地元の水環境に深い思いをもって、心から活動をしている。そういう皆さんと一緒に、協力して、活動できるということは本当に嬉しいことです。一人ではなにもできません。感謝、感謝です。」
柳川市大和町に面した干潟。一番潮が引いた状態。見渡す限りの干潟が広がっている。
海苔の養殖の時期には、一面が海苔網で埋め尽くされる。

EM活動を未来へ繋いでいくために

堤さんは毎年、EM団子作りの他にも、EMボカシ作りや、石けん作りの会や講習会なども行っています。学校でのEM活用の講習会なども、希望があれば行いますが、今ではEMについての知識や作り方も浸透したので、逆に頼まれることは少なくなりました。
堤さんも柳川市には本当にEMが定着したと感じているそうです。
「でも、もっと市が主体になって動いてもらわないと。ボランティアが居なくなったら誰もしないというのでは困るでしょう。市が動き、ボランティア(『甦る有明海ネットワーク・ちくご』)はあくまでも手伝いという風にならないとと思って、働きかけています」
堤さんご夫妻や、一緒に活動を続けてきた仲間の皆さんも、年齢が上がってきています。EMの活動も70代の方が中心で、地元の若い人は生活や仕事に忙しく、ボランティア活動に全力を注ぐことは難しい。だからこそ、行政がボランティアを集め、有明海や、地元の環境を守る活動の牽引をして欲しい、ということが、堤さんの一番の願いです。
「体が動く間は頑張りますよ」と、堤さんはこの先も豊かな有明海を護り後の世代に繋いでいくために、未来へ目を向け、活動を続けています。


取材日:2017年4月28日(MN)