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Dr.田中佳のEM健康アドバイス ~身体を温めることの善し悪し~

体を温めることのメリットと変化

何か健康に良さそうなことをする際に大切なことは「少しでも深く知って活用する」ということです。なぜ身体を温めると健康に良いかを端的に申し上げれば、代謝全体が上がるからです。代謝は身体の営みの全てを指します。

その結果、体内ではエネルギーを産生したり、不要物を捨てたり、色々なことが起こります。車で例えますと、スピードを上げればガソリンの使用量や排気ガスが増え、タイヤが減る代わりに、移動することができる、という感じです。

身体を温める際の注意点は、車の例えのように「何かを成す為には必ず消費するものと老廃物が増える」ということです。ここをちゃんと抑えないと、よかれと思ってした事が不健康領域へ突入するだけとなってしまいます。

何が不足?何で補う?

何を消費しているのかというと、水分と塩分(ミネラル成分)が主体ですが、ビタミンも同時に消費しています。代謝に必要な酵素の働きを円滑にする補酵素の役割を担っているのがビタミンとミネラルです。

ビタミンやミネラルの補給というと、スポーツドリンクやサプリメントを思い浮かべる人が多いように思いますが、もっと身近に優れた食品があります。塩と味噌です。塩も塩化ナトリウム99.9%の塩ではなく、海水から作られた本当のを舐めながら水を飲めばよいのです。

味噌の主原料は大豆であり、畑の肉と言われるほどの高たんぱく質食材です。それが菌の酵素に醸されてバラバラのアミノ酸に分解されます。真面目に作られた御味噌には御塩も入っています。

スポーツ用のプロテインはボディビルダーには必要かもしれませんが、一般人は味噌汁で良いのではないかと思っています。ボトルに冷や汁を入れて運動中に飲んでもいいかもしれません。少なくとも運動前後に本物の御味噌で作られた味噌汁を飲んだ方がよいと思います。

 

温めすぎは危険?

何らかの方法で身体を温めると心拍数が上がり、汗をかきます。これは、全身の細胞が酸素と栄養を必要としていると心臓が判断した結果、心拍数を上げざるを得ない状況となったのです。

発汗の意味は体温が上がりすぎて身体に熱が溜まり危険な領域に行かぬよう、気化熱を利用して体温上昇を抑えようとしている状況です。ですから、心臓がバクバク感じて、汗が噴き出てきたら、それ以上身体を温めることは健康を害する領域だということです。

このようなことは唐辛子を食べても起こりますが、これは唐辛子の成分のカプサイシンが代謝を活発にして身体を温める効果を持っているからです。多くのスパイスは漢方や生薬としても使われていますので、学んでみるのもいいですね♪

温泉は私も大好きですが、せっかく来たのだから温泉に入りまくり、1分でも長く入ってやろうとしてのぼせたら本末転倒、不健康極まりない温泉旅行となります。温まってののぼせは運動せずに心拍だけが上がる事態なので、お湯から出て身体が冷えるのを待てばおさまります。体温が下がっても全身倦怠や食欲不振があるようですと、湯疲れと呼ばれるワンランク上の悪い状態です。運動の場合は自分の限界を超えるまでできませんが、温泉は座っているだけなので簡単に超えられます。だからこそ、注意が必要です。

温泉の目的は身体を温めること、リラックスすること、温泉成分を経皮吸収させることです。どの方法でも共通しますが、温めすぎて「消耗」の領域に入らないようにご注意下さい。

特に消耗性の病気(例えば ”がん”)の方はお勧めできません。湯治に行かれる方は湯治士さんがいる温泉で正しい指導の下でご利用下さい。一応健常人の私は開放的な露天風呂で空や景色を眺めながら深呼吸をして、出たり入ったりを繰り返しのぼせないようにします。

のぼせの状態が近づいた時点で入浴は終了しますが、平均的に30分は湯船にいます。そしてのぼせたり湯疲れすることはありません。経験的には岩盤浴やヨモギ蒸しもお勧めです。
■身体を温めることのまとめ

【良い点】

血が全身を巡る。血は全細胞へ酸素と栄養素を運び、不要物と二酸化炭素を捨てる。

【注意点】
心臓への負荷が増し、体力を消耗する。全細胞の代謝力が増し、ビタミンとミネラルを消費する。自分の限界を知り、見極めること。消耗性の病気には不向きであること。

【補充】
熱中症対策と同じく、水分と塩分。但し精製塩を避け、本物のにすべし。ちゃんと作られたを活用すべし。

 

田中 佳 医師 / ドクターセラピスト
昭和60年に東海大学医学部卒業後、同大学付属病院脳神経外科助手を経て、市中病院で急性期医療に長年携わる。脳神経外科学会および抗加齢医学界の専門医となり、悪性脳腫瘍に関する研究で医学博士を取得。現在は、食や生活習慣、日用品、心の在り方など多岐にわたる方面から健康への道筋を広く発信している。著書、講演、オンライン講座多数。元日本脳神経外科学会認定専門医/日本抗加齢医学会認定専門医/直傳靈氣療法師/整膚師/ISBA(国際シンギングボウル協会)上級認定および認定プレーヤー/ホメオパス(クラシカル)