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Dr.田中佳のEM健康アドバイス~お肌のメンテナンス~

皮膚は何のためにあるのか?

お肌のメンテナンスとは、草木を育み砂漠化を防ぐこと、もしくは砂漠から緑地化を目指すことと言えるでしょう。
そのために、何をすれば良いのか。今回は、解剖学的視点からお肌(皮膚)についてお話ししてまいります。


外界の刺激から体を守ることと同時に、体内の水分を保持する役割があります。全身火傷の面積が30%を超えると命の危険があるとされています。確かに、救命救急熱傷センターで全身火傷の患者さんのケアをして、その重要性を実感しました。多くの皮膚を失うと体液が大量に体外に漏れてしまい、著しい脱水に陥ります。両手両足から大量の輸液を入れても間に合わないほど、損傷した皮膚全体から体液が漏れ出てしまい、まるで穴の空いたバケツに水を入れているかのようです。

皆さんにも火傷をして水ぶくれの経験があると思いますが、皮膚損傷による水漏れが起こっているのです。ですから、破かない方が良いのですが、たとえ水ぶくれが破けてしまっても、剥がれた皮膚を張って被覆しておくことが大切です。
もう一つの問題は感染症です。以前に担当した全身熱傷の患者さんのガーゼが緑膿菌で覆われて、緑色と化していました。
当時、それをハサミで毎日剥ぎ取っていましたが、終わりのない作業で、結局は敗血症に至り亡くなることが多かったです。つまり、わずか約0.2㎜の厚みしかない皮膚(表皮)がないと、我々は生存できないのです。

お肌にいいこと、悪いこと

お肌を労るためには、いかに低刺激であるかが重要となります。外的要因としては、紫外線、化学物質、乾燥、引っ掻き損傷、圧迫などがあります。肘をつく癖のある方の肘の皮膚は黒ずんでシワシワだったりしますし、正座をされる方の膝も同様です。損傷しやすい外側の皮膚は厚めで、内側は薄めです。
薄い皮膚は弱いですから、アトピー性皮膚炎の好発部位となります。例えば、皮膚の薄い肘の内側、膝の裏側が多くなります。

お顔の皮膚もとても薄いのに、外界にさらされ続け、太陽にも近く、過酷な環境で、シワやシミができやすくなり、アトピー性皮膚炎も起こりやすい場所です。

また、紫外線対策で日焼け止めクリームを塗るのも良いですが、SPFは日焼けを「止める」のではなく、日焼けを「しにくくする」ものです。日焼けは止められません。先延ばしにするのです。
賛否両論はありますが、できれば高すぎないSPFを選び、紫外線吸収剤が入っていないものを選ぶのが無難かと思います。あとは衣服や傘などで防ぎましょう。

無意識の日常行為として、入浴時にゴシゴシ洗うことがありますが、皮膚の損傷を招くのでお勧めできません。特に皮膚炎の方は、いかに洗わないかが重要になります。テレビ番組でタモリさんが「どうしてお肌が綺麗なのですか?」と質問された時、「風呂に入っても洗わないからだよ」とお答えになっていました。
日常生活の汚れであれば、沐浴で充分です。頭部も湯洗だけの方がいます。洗剤は毛の生えている部分だけ、ササッと使うのはいいでしょう。

洗顔フォームで顔を洗った後に突っ張る感じがしたとしたら、それは顔の皮脂が取れすぎていると思っていいでしょう。全身を洗った風呂上がりでも、全身のお肌が突っ張ることはないでしょう?
それだけお顔のお肌は薄くて敏感なのです(皮膚炎の方は全身が敏感になっています)。洗顔料を使って洗顔したら、水分を拭き取った後に直ぐ保湿した方がいいでしょう。

これは私の個人的見解ですが、皮膚の仕組みからメンテナンスを考えた結果、実際に行ってみて間違えてはいないなという感覚を持っています。
お肌の健康は、根本的には体の代謝力に直結します。また、生活改善や生きざま改革も関わってきますので、その辺のお話は講演会や書籍も参考にしていただければと存じます。

田中 佳 医師 / ドクターセラピスト
昭和60年に東海大学医学部卒業後、同大学付属病院脳神経外科助手を経て、市中病院で急性期医療に長年携わる。脳神経外科学会および抗加齢医学界の専門医となり、悪性脳腫瘍に関する研究で医学博士を取得。現在は、食や生活習慣、日用品、心の在り方など多岐にわたる方面から健康への道筋を広く発信している。著書、講演、オンライン講座多数。元日本脳神経外科学会認定専門医/日本抗加齢医学会認定専門医/直傳靈氣療法師/整膚師/ISBA(国際シンギングボウル協会)上級認定および認定プレーヤー/ホメオパス(クラシカル)
https://capybara-tanaka.com/