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Dr.田中佳のEM健康アドバイス ~明るく楽しい子育てをしよう~

子育ては本来、辛くないことだった

国行脚の中で色々な方とお話ししていますと、子育てに困っている若いママさんがとても多いと感じます。
眉間に皺を寄せていつもイライラしているママって幸せじゃないと思うのです。家でママが明るく楽しく元気溌剌で太陽のようであったら、どれだけ家庭が照らされるでしょう。

里山で長屋文化の子育てをする場「みつはの里(大阪府)」を作っている元保育士さんが、以前、想像を超える苦労が伴う子育てを経験し、「脈々と命を繋いできた子育てが、こんなに辛く苦しいはずはない!」と、昔の子育てを調べたところ、子育ての役割の中心は男だったそうです。

長屋文化で隣近所が助け合っていた風景は、戦後の下町にもありました。他人の子どもを叱ることができる間柄で、もらい乳も日常だった。子育て経験者も周りにはたくさんいた。それなのに、今は他人に干渉することを良しとしない風潮があり、ママの孤立への背中を押しています。

孤立していくママたち

産後に実母が子育てに付きっきりで来てくれたら良いのですが、完全核家族となり、世代間の連携が切れた場合、ママが子育てを辛いと感じてしまう環境ができてしまいます。

昔ながらの床上げ21日はできず、骨盤が緩んだ亜脱臼の状態のまま育児と家事をこなし、不眠不休の赤ん坊に付きっきりとなり、精魂疲れ果て、洗濯物をたたんでいないだけで夫から文句を言われれば、夫嫌いになるのは当然でしょう。夫は赤ん坊と3日間付きっきりになれば理解できるはずですから、経験させるといいと思います。

もし赤ん坊を抱えたまま転勤しようものなら、見知らぬ人と土地に囲まれ、孤立感は強くなります。内気な方なら尚更です。共働きも当たり前になった今は、ますます苦労は増える一方です。

ママが背負う重い責任

ママが子育てを辛いと感じてしまうこの問題の大きさは、一人の人間の命を無事に育てなければならない重責にあります。ミルクの飲みが悪かったり、母乳が出にくいだけで自責の念に駆られ、熱を出せば死ぬんじゃないかとオロオロする。

それが続くと、眉間に皺を寄せていつもイライラしているママ、幸せオーラが出ていないママになっていく。それは家庭を明るく照らす太陽が厚い雲に覆われるようなものです。

そんな時に育児書やネット検索に頼り、落とし穴にはまるママが続出します。特に出産経験のない医者の言葉は要注意なので、医者には医学知識だけを貰いましょう。

子育ての極意

では子育ての極意を述べます。最も大切なことは【① 決まりを作らないこと】です。決まりに縛られて身動きが取れなくなり、結果として子育てが辛く苦しいものとなっていくのです。
赤ちゃんも一人ひとり個性があり、教科書通りにはいかない前提から子育ては始まります。育児書などの一般論を参考にしてもよいですが、決まりにしてはいけません。情報の是非は「なぜそうなのか」を確認する習慣を身につければ分かるはずです。

次に大切なことは【② 子どもを観察すること】です。ちゃんと観察していれば、赤ちゃん(幼児)の気持ちや訴えは分かるはずです。「今は忙しいから後にして」とか言っていませんか? そして、【③ 自然の節理に従うこと】です。この原則に従うと「ミルクは3時間毎でなければならない」という決まりではなく、空腹を訴えて泣いてから授乳をすればよく、満足したら飲むのを自ら止めるでしょう。それは幼児も同じです。「離乳食は半年から」という指導をする人がいますが、「子どもが欲しがった時から」でいいのです。

子どもの健康目安は「機嫌と食欲」です。しかし、成長曲線が水平になるなら考え物です。赤ちゃんの成長は著しく、体重は増え続けるもので、増えないとしたら必ず理由があります。ともかく、病気かどうか分からない時は小児科や助産師へ相談するといいでしょう。

子どもに必要な親の愛情に包まれながら伸び伸びと育っていく。親の役目は、子どもが育つのをいかに「邪魔しない」かです。「育てる」という傲慢さを外し、一人の人格ある人物として尊厳を持って自然体で接して下さい。

田中 佳 医師 / ドクターセラピスト
昭和60年に東海大学医学部卒業後、同大学付属病院脳神経外科助手を経て、市中病院で急性期医療に長年携わる。脳神経外科学会および抗加齢医学界の専門医となり、悪性脳腫瘍に関する研究で医学博士を取得。現在は、食や生活習慣、日用品、心の在り方など多岐にわたる方面から健康への道筋を広く発信している。著書、講演、オンライン講座多数。元日本脳神経外科学会認定専門医/日本抗加齢医学会認定専門医/直傳靈氣療法師/整膚師/ISBA(国際シンギングボウル協会)上級認定および認定プレーヤー/ホメオパス(クラシカル)
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