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米食味鑑定士がうまいと納得。滋賀の環境こだわり米

京都から湖西線に揺られて50分、滋賀県高島市新旭は琵琶湖とその水辺景観で日本遺産に登録されている山と川と関西弁が心地良い町です。カバタ(川端)という湧き水を生活に利用している集落もあり、水をとても大切にしています。
滋賀といえば赤いこんにゃく、鮎、鮒寿司、近江牛と広いジャンルで面白い社屋材が豊富ですが、関西圏では何と言ってもお米!近江米が一番有名ではないでしょうか。

 

近江米が広く知られるようになったのは、平安時代に、隣接する京都が都として栄え、人口が増加したことにより、近江のお米が都へ大量に運ばれたことによります。さらに、近江米の評価を高めたもうひとつの理由として、皇室との深い関わりが挙げられます。歴代天皇の御即位(ごそくい)の大礼(たいれい)に際し、献上(けんじょう)米を作る特別な田として、滋賀県内の高島、愛知、坂田、野洲、甲賀などの地域が、これまで40回以上にわたって選ばれています。神事とはいえ、実質的にはより優れた産地が選ばれることから、近江米の品質の高さが古くから全国に認められていたことを物語っています。


 

  • 日本遺産に登録されている琵琶湖周辺の風景
  • 「新旭EM栽培生産者グループ」の小島さんと日爪さん

ご紹介させていただくのは、高島市にて「EM美味米」を生産している「新旭EM栽培生産者グループ」の小島さんと日爪さんです。小島さん達と知り合いになったのは2001年、私が入社間もない頃です。稲作を学生時代に学んでこなかった私は新潟県の生産者さんや小島さん達と知り合い、一緒にEM散布や作業をしながら試行錯誤していました。そんな私に優しく色々なアドバイスと、いつも気さくに接してくださる小島さん達とEM美味米ブランド立ち上げに必要な差別化技術として、この時期にこれを与えるとバッチリというEM使用法を発見したのです。EM美味米は滋賀県で生まれたと言っても過言ではないと思っています。その後、2005年にEM使用基準を設けた当時唯一のブランドとして立ち上がりましたが、滋賀のお米は今も人気の銘柄になっています。

小島さん達に出会うと、「お米を食べることで、皆で琵琶湖の水と人々の暮らしを守っていこう」という熱い思いが伝わってきます。県のど真ん中に琵琶湖があることから、湖水の水質について、滋賀県の生産者の農業への取り組みが素晴らしく、全国でもトップクラスの厳しい栽培基準が設けられています。

例えば「環境こだわり米」です。環境こだわり米とは、農薬や化学肥料の使用量を通常の半分以下にし、田んぼから濁水を流すのを防ぎ、琵琶湖やその周辺の環境保全も考えながら栽培されたお米のことです。こうして栽培されたお米は、滋賀県から「環境こだわり農産物」として認証され、より安全・安心なお米として全国に流通します。更に、環境こだわり米以上に農薬の基準を自社で厳しくして、減農薬・無農薬米を栽培している生産者の方もたくさんいらっしゃいます。
小島さん達は新しい挑戦を今年しています。これまでコシヒカリをEM栽培していましたが、新品種「きぬむすめ」「にこまる」も栽培中です。

「きぬむすめ」は強稈・良食味品種「キヌヒカリ」の後代から生まれた優良品種となることを願って命名されました。
平成26年2月に日本穀物検定協会が発表した「米の食味ランキング(平成25年産)」においては、鳥取県産「きぬむすめ」が5段階評価の中で最高となる「特A」も取得しています。 特Aを取得したのは鳥取県産のお米としては初めての快挙で、中国地方全体としても平成15年に島根県産のコシヒカリが特Aを取得して以来ということで、実に10年ぶりのことです。それだけ期待されている新品種なのです。「きぬむすめ」は粒が大きく、白くて美しいお米です。粘りが強く、ふっくらで柔らかなお米です。粘りと旨味があるので、炒飯やカレーライスには不向きです。冷めてもモチモチしているので、お弁当やおにぎりに向いています。
 
「にこまる」の名は、笑みがこぼれるほどおいしい品種で、丸々とした粒張りのよさを表現した可愛い名前がつけられています。「にこまる」は、つやが良く粘りが強い食味が特徴です。粒ぞろいが良くふっくら炊き上がるため、モチモチした食感を味わえます。米粒も「コシヒカリ」よりも大きく、噛みごたえがあり食感の良く、おかず無しでも食べて満足するお米です。「米・食味分析鑑定コンクール」では、近年入賞したお米の中に「にこまる」が多くみられるようになり、味の良さは広く認められてきています。「米・食味分析鑑定士」の食味試験で、私を含め受験者の多くを悩ましたのが新潟県南魚沼産「コシヒカリ」と滋賀県産「にこまる」の判断でした。それぐらい良食味だと記憶しています。

 
  • 小島さん達の田植えは5月13−15日、お伺いした6月下旬は稲が成長し、水田の水面がキラキラしていました。

小島さん達の水田は琵琶湖の水を使った水田ではなく、全国鮎釣りファンの聖地である安曇川の水を引いています。そのため以前お伺いした時、水路に鮎がいたのにびっくりした記憶があります。

よく観察すると水の中は生き物だらけでした。びっくりしたのはメダカの数で、まるでメダカの学校状態です。近年、土地改良や農薬化学肥料や水源の変化により、水田の生き物は減る一方ですが、ここは違います。小島さん達も「特にEMの田んぼは生き物が多い。代掻き時にトラクターの後ろで生き物を啄ばむサギの数も、近くのEMでない水田を代掻きするより断然多いんだ」と教えてくださいました。しばらく観察しているとトンボのヤゴだと思ったのですが、タイコウチを発見しました。タイコウチは水田の生態系ピラミッドの頂点付近に位置する水生昆虫で水環境が豊かな場所でないといない生き物です。発見した時にはすごく感動しました。

  • タイコウチは水田の生態系ピラミッドの頂点。水環境が豊かな場所でないと生きていけない
  • これがメダカの学校だ!
道路を歩くスッポンの動きは意外と素早いんですよ

前日に大雨が降ったようで、日爪さんの水田にナマズが上がってきたそうです。土地改良で水路が整備され三面コンクリートの水路だと水田と水路に距離があり、魚の行き来が近年の水田では多いため、水田で大型魚類を見かけるのは珍しいことです。日爪さんの水田は魚道を整備されているため、このようなナマズは今では珍客ですが、より良い環境求めて水田に上がって来るようです。

一番びっくりしたことは大雨の日にスッポンを3匹見かけ、道路に歩いていた1匹を捕獲したとのことで見学にお伺いしました。
見せていただいたスッポンはまるまる大きく、つぶらな瞳が可愛いヤツでした。天然スッポンなんて日本にいないと思っていましたが、いましたよー高島市に。20年以上前に川の上流のスッポン養殖業者がスッポンを逃してしまい、それが繁殖して代を重ね、現在この地区では普通に田んぼで見ることが出来るとのことです。メダカ、タイコウチ、ナマズ、スッポン、ヘビ、サギなど小島さん達の普通が私達の普通じゃないことが分かり、改めてこの地区は面白いなと思いました。小島さん達のお米の生育は順調そのもの、実りの秋を期待できそうです!!!